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2024年8月14日 (水)

『ゴジラ -1.0』

 『ゴジラ -1.0』は2023年の日本映画。この題名の意味は、太平洋戦争によってほとんど壊滅的、つまり無(ゼロ)に帰した日本が、さらにゴジラによって-1.0の状態になったということを意味しているらしい。なるほどとも思うが、それ以上にゴジラというものが、じつはアメリカの象徴なのだということ(これは映画通にはよく知られている)をこれほど明確に表現している映画はないと思った。日本を襲撃し、都市の建物を破壊し、放射能を増幅して怪光線で一瞬にして焼き付くし破壊し尽すという行為は、日本人にとっては、あの爆弾と焼夷弾による大空襲であり、原爆投下そのものではないか。

 

 そして進駐軍はゴジラに対して沈黙して行動せず(相手がアメリカならあたりまえだ)、特攻隊の生き残りである主人公(神木隆之介)と海軍の生き残りたちがゴジラを倒すために結集して戦いを挑む、という物語なのだ。太平洋戦争で、兵士たちは日本を守るため、家族を守るためと信じようとしながらも、じつは無駄死にをさせられていた。それが今度は本当に日本を守り、家族を守る戦いに自ら命をかけるのだ。自分の卑怯さで生き残ってしまった主人公が、ゴジラを倒すことで自らを再生させていく、という、とてもわかりやすい禊ぎの物語なのだ。

 

 怪獣ゴジラが初めてつくられたときは、明らかにその寓意を含んでいたはずだが、たくさんつくられ続けているうちに、いつの間にかゴジラは人類の味方に立って他の怪獣たちと戦う、などと言う物語が作られていった。なるほど、日本を破壊した、敵だったアメリカがいつの間にか安保条約によって日本と同盟を結び、ゴジラは戦うが日本はその勝利を祈るだけ、という図式をなぞった物語に変じたのか。アメリカでゴジラ映画が作られたりした、ということに笑ってしまう。自分がゴジラだと気がついていないのである。

 

 そういう見方でこの映画を見てみると面白いと思う。吉岡秀隆がひょうひょうとした役柄を好演していた。

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