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2024年8月30日 (金)

『こんにちは、母さん』

 山田洋次監督の『こんにちは、母さん』(2023年)を見た。大泉洋と吉永小百合が主演。大泉洋の主演する映画を初めて見たのは『青天の霹靂』という映画で、意外に面白く、大泉洋の演技も好感が持てた。それ以来彼が主演の映画をいくつか見たが不満の映画はない。今回も期待を裏切らなかった。

 

 人は悩みや苦しみを抱えると周りが見えなくなり、気配りや思いやりのゆとりを失う。そのために他人は離れていってしまう。そういうときにこそ支えてほしい家族も、離れてしまう。ただただそれを心配し、気にかけ、優しく受け止めてくれるのは母親だけだ。

 

 大会社の人事部長をしている息子(大泉洋)は仕事の性質上、意に染まない生き方に苦しんでいる。妻と一人娘(永野芽郁)は半年前に家を出てしまい、わびしい一人住まいをしているが、下町でささやかな足袋屋をしながら独り暮らしの母(吉永小百合)にはそれを伝えていない。

 

 たまたま同期入社の友達の依頼もあって、ずいぶん久しぶりに息子は母親のもとを訪ねる。そこから物語が始まっていく。母親は、普段は饒舌な息子がおとなしいことから、心配事があることに気づいている。その母親は明るく生き生きしている。母親とボランティア活動している仲間たちが、彼女は恋をしているのだ、と息子に告げる。「みっともない、恥ずかしい」と切って捨てる息子。その母親の元に孫娘、つまり息子の一人娘が転がり込んでくる。互いの関係に新しい風が吹き出す。

 

 ハッピーエンドではないからハッピーエンド、などというとおかしな言い方だが、人生には修正が必要なことがあり、諦念と新しい生き方が、人をよみがえらせて元気をくれることもあるのだ。淡々としていながらしみじみとした気持ちにしてくれる、山田洋次監督らしい映画だと思う。

 

 もっとも私に刺さったのは、母親が「年をとるのは不安なものだ」と語った部分だ。いつか自分の体が自分の思い通りにならなくなる、人に世話してもらうしかない時がくる、それが不安なのだという。それまでのあいだのあと少しのあいだ、三年か五年か十年か、誰かに支えたり支えられたり寄り添いたいと心から思うのだ、という。これはたぶん吉永小百合の素の本心でもあり、山田洋次の本心でもあり、それだからこちらに届く一言になる。若い人にはわからないだろう。

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コメント

私も以前に大泉洋の映画だったか、テレビドラマだったかを観ましたがなかなかの演技力だったように思いました。
初めのうち、大泉洋はいったい何者なのかよくわかりませんでしたが俳優さんだという事がその時にわかりました。彼の場合美男過ぎない、何処にでも居るというごく普通の容貌とその持ち味がドラマに生きてきますね。


おキヨ様
どちらかとお調子者のタイプが嫌いなので、最初はあまり好感を持てませんでしたが、次第に馴れてきました。
スポーツ選手出身のお調子者など、やかましいタレントは基本的に大嫌いです。

こんばんわ!
吉永小百合さんのファンでもあり、この映画を観に行きましたよ・・・
確かにそのような科白があり、その年にならないと分からないよな~
俺も父の享年の年になって、父の思いもこうだったのだろうな、
そう思いました。若い頃はそんな事は勿論考える事はなかったと
思います。

でんでん大将様
頭で知っていることと本当にわかるということは違うのだということをこの歳になってようやくわかりました。

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