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2024年8月16日 (金)

蒙を啓かれる本

 いま『日本の歪み』(講談社現代新書)という本を読んでいる。養老孟司・茂木健一郎・東浩紀の三人が日本の論点についての持論を語り合い、互いに影響し合っているように読める。本を読んで新しい視点、考える道具をえられることは読書の喜びである。面白いから読む本とは少し違うけれど、こういう本で励起する精神の高まりも面白いと言って好い。一度読んで終わりにするにはもったいない本で、いまはとにかく通読し、少し間を置いて再読三読して考えてみようと思う。途中から付箋をつけたら、付箋だらけになってしまった。そのひとつを引用する。

 

東 日本は大国に向いていない。やはり十九世紀に清帝国が崩壊したのが大きかったのでしょうね。本当なら「清vs.ヨーロッパ」になっていたはずですから。
養老 その通りですね。
東 あのとき清がグズグズになってしまったので、辺境の国・日本も頑張らざるをえなくなってしまって明治維新が起きた。そして中国まで手に入れようとしたわけですが、どうもおかしい。明治以降の東西文明論では日本とヨーロッパを対比し、日本こそが東洋的なものを代表すると考えられがちなわけですが、かなり無理がある。日本がヨーロッパと異質な文明をもつのは間違いないけれど、東洋やアジアを代表するのは中国の方でしょう。
養老 インドもありますからね。
東 まさにそうです。東洋を日本で代表させているのはまちがいだし、逆にいえば日本の哲学はもっと大きなアジア的な物差しの中で読まれるべきだと思います。

 

 私が歴史を遡っていって、中国に興味が移ったことについて自覚的ではなかったけれど、どうやら必然的な面があったのだという気になった。日本が衰退してアジアのリーダーではなくなり、中国やインドが擡頭したのは当然の成り行きで、未だに主役が交代したことに気がついていない日本の政治家がいるのは滑稽である。ポジションの維持のために必要な資質を政治やマスコミが毀損し続けながら、おかしなプライドだけを持ち続けることに対して、この本の中でさまざまに論じられている。この本については何度か言及することになりそうだ。

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