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2024年9月 1日 (日)

『未来のミライ』

 『未来のミライ』(2018年)は細田守原作・監督のアニメ映画。まだ幼稚園に通う前の男の子の目から見える世界を描き、その心の成長と、人がこの世にいることの、連綿と過去から続いてきた生命の継承の意味を優しく伝え、考えさせてくれる映画である。声優が上白石萌歌、黒木華、星野源、麻生久美子、宮崎美子、役所広司、福山雅治等々と豪華である。主題歌は山下達郎。すべて好い。

 

 幼児は、自分がしたいことが受け入れられないと「やぁだぁ」という。大人はたいてい条件をつける。「・・・をしたら・・・をしてやる」。幼児にとってはどちらも受け入れられないから「やぁだぁ」という。それではいつまで経ってもらちがあかないし、子供の要望を認めてしまうと切りがないし悪い癖がついてしまうと大人は思う。

 

 この男の子は「やぁだぁ」からまだ脱していない。それは母親をはじめとして周りの大人が自分と不可分で、自分をただ庇護し、受け入れてくれるものと信じ込んでいるからだ。そんなとき、母親が妹を産んで産院から帰ってくる。みな赤ん坊にかかりきりになる。自分の妹だというその赤ん坊がきっかけで、自分は世界の中心ではないことをうすうす気がつくのだが、なかなか受け入れることができない。

 

 彼が世界を受け入れるまでのさまざまな不思議な出来事が描かれていくのだが、彼の経験をサポートしてくれるのは、その赤ん坊が少女になった、未来のミライなのである。こんな話はアニメでしか描けない。そしてこのアニメを通してしかこの男の子の体験した世界とその受け入れは理解できない。そういう不思議な映画で、たぶんこの映画はわかる人とわからない人とに別れるかもしれない。私は好いアニメだと思った。

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