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2024年9月13日 (金)

『パイプのけむり』

 このところずっと、寝入って二三時間で目が覚めてしまい眠れなくなる。昨晩もそうして寝床で輾転反側していた。起き出すともう明け方近くまで起きていることになるので、スタンドの灯りをつけて寝床で團伊玖磨の『パイプのけむり』を読み出した。途中でいつの間にか眠っていたが、朝寝坊をしてしまった。自分に遅刻で、遅刻は嫌いだがいまは体調回復に努めている時期であり、ルーチンにはこだわらないことにしている。

 

 文庫版の『パイプのけむり』は作曲家の團伊玖磨のエッセイ集で、1964年(東京オリンピックの年)から雑誌『アサヒグラフ』に連載(毎週)が開始され、シリーズになり、まとまると本になって出版された。私の手許には20冊ある。軽い読み物が多いが、ときにずしりとくるものが混じる。團伊玖磨は生き方に断固たるこだわりがあって、決して軽くないのだ。そこにふれるとときに気持ちが引き締められる。人はこだわりを持つほどの生き方をしなければならないと教えてくれるようなエッセイが好きだ。好いエッセイはたいていそうであり、残してあるものはすべてそうだといえる。

 

 第一冊目の目次には鉛筆でいろいろと薄く印がつけられている。それを懐かしく思いだした。この本を読み始めた頃、まだ世の中はパソコンの黎明期で、ソフトでワープロを使うなどというほどの能力はなく、高価だった専用のワープロ機がようやく普通のサラリーマンにも買えるほどになり、私も大枚をはたいて東芝のRUPOというワープロ機を買った。その頃はまだインクリボンを使うから、その消耗費も高い。

 

 『パイプのけむり』が面白いから、と両親に勧めたけれど、字が小さくて読むのがつらい、といわれた。そこで思いついたのが、自分のキーボードの習熟と両親のために、ワープロで文字を大きくしてプリントすることだった。そのためにどれが両親に面白く読んでもらえるか、どれが読んで好かったと思ってもらえるか、内容を考えて選別し、せっせとワープロに写し取っていったのだ。その選考のあとが目次の印なのである。これを冊子状にして、しばらく続けたから何冊もあった。あれはどうなっただろうか。懐かしい。おかげで文章を読む力も少しは身につき、キーボードもそこそこ使いこなせるようになった。それ以来の仮名漢字変換なのである。わたしのこだわりである。

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コメント

それとは関係あるかどうかは分かりませんが、軽井沢に”パイプのけむり”というホテルがあったことをふと思い出しました。私はそのホテルに宿泊したことがありますが、真夏とは思えない涼しさでした。
軽井沢の喧騒を遠く離れた反対側だったと思います。
パイプのけむり・・・はたしか以前に「これも貴方様のご紹介かどうかも定かではない(-_-;)」で読んだ記憶があります。

以前の事を皆忘れてしまいます。もうボケ症状だと思います(´;ω;`)

おキヨ様
團伊玖磨のこだわりは一種のダンディズムで、若いころひどく憧れた記憶があります。
憧れても真似することばできなかったですが。

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