スパイスチェック
三十代の終わり頃、美味しいカレーを作ってみたいと思い、たまたま新書版のホルトハウス房子さんという方のカレーの本を買った。本格的なビーフカレー、チキンカレー、エビカレーなどのレシピやスパイスの知識が書かれていた。それを機にスパイスを買いそろえた。当時のスーパーでもそこそこの種類を揃えることができた。出来合のルーのどろりとしたものではなく、野菜だけのわずかなとろみのカレーである。私なりに美味しいと思うものができるようになったし、子供たちにもまあまあ好評だったが、両親にはあまり好まれなかった。スパイスになれていないせいだろう。
さすがに最近は面倒なので、本格的なものはめったにつくらず、市販のルーを使う。ただしルーはバーモントカレーである。野菜や肉を炒めたりする時にスパイスをいろいろ使うので、個性の強いカレールーよりは、バーモントカレーの方が多種類のスパイスとけんかしないのだ。そのスパイスを見ていたら賞味期限切れのものがたくさんある。多少の賞味期限切れは気にしないが、さすがにこれは、と思うものは捨てることにした。最近はなくなったと思って買ってきたら、それはまだ残っていて、ないのは別のものだったりして、がっかりしたりする。
中華のスパイスや調味料もいくつか使うので、それもチェックした。いまお気に入りは花椒(ホアジャン)で、小さなペッパーミルに入れておいてその都度挽いて使う。麻婆豆腐にこれをたっぷりかけるとインスタントでもそれなりの辛みがでて美味い。魚のバター焼きには軽く塩をしたあと、五香粉というスパイスをふってから調理するとただ焼くよりもずっと美味しい。ただ、これも独り暮らしだとそれほど使うものではないから、あっという間に古くなってしまう。まあスパイスというのはそういうものなのだとあきらめてはいるが、そのチェックがおろそかになっていたのは自分の衰えだと感じているところだ。
美味しいものを食べたければ、そういうところをおろそかにしてはいけないと思う。いうほどつくっていないから古くなってしまうのだけれど。
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