前よりもわかった
ずいぶん久しぶりに映画『マトリックス』を見た。初めて見た時にはよくわかっていなかったことが、今回見て前よりもわかった気がした。仮想現実というものが、どんどんリアルになりつつあるいま、この映画がしめしていたものがどれほど先見性に満ちていたかを改めて感じさせられた。
人間は五感で得た情報を脳に送り、脳がそれを元に現実を認識している。その情報を五感からではなく脳に送り込んで、脳がそれを五感からのものと区別できない時、脳はそれを現実だと思ってしまうかどうか。それについてはSFの名作がたくさんあって、私はたしかスタニスラフ・レムの作品で考えさせられたことがある。唯物論と唯心論または観念論との論争も、そういうことをとことん突き詰めたものといえる。
現実は本当にあるのか。脳がただ夢見ているだけではないのか。そんなことを考えても、以前はただの妄想のように感じられたものだが、いま仮想現実がますますリアルになりつつあることを思うと、だんだんその境界が不分明になっていく気がする。AIの現実認識とは、そういう与えられた情報を元に現実を把握しているのであって、現実を生きているはずの人間が、AIにお伺いを立てている図式など、倒錯そのものだが、倒錯が倒錯とも言えない時が来ないとはいえない恐ろしさを感じる。
引き続き『マトリックス』シリーズを見ていくことにする。全部で四作、さらにスピンオフのアニメも一作ある。
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