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2024年10月10日 (木)

『ソラリス』

 ソダーバーグ監督の映画『ソラリス』を見た。主演はジョージ・クルーニー。原作はポーランドのSF作家スタニスラフ・レムの『ソラリスの陽のもとに』であるが、この小説は映画に描かれているものよりもずっと詳細で膨大なものである。この小説を映画化したロシア(当時はソビエト)のタルコフスキー監督の作品『惑星ソラリス』をベースにしたものといった方がよいだろう。私は若いときに原作に感銘を受けており、だから映画の『惑星ソラリス』も見ているが、違う作品だと感じた。というよりも、タルコフスキーがレムの原作から、その認識論的な側面を抽出して描いたものだと感じた。

 

 生かじりで引用するのは気が引けるが、ショーペンハウエルが「世界は私の表象である」ということばの表すもののことである。ここで「表象」とは「目前に見るように心に思い描くこと。心像、創造、観念など広い意味を含む」と注釈にある。五感によって得られた情報をもとに脳は世界を現実として認識しているが、本当に現実は存在するのか。それはただ脳の働きに過ぎないのではないか。映画では描かれていないが、それは、情報だけをもとにしているAIは現実を認識、把握してるか、という話にも通じていく。

 

 今回見た『ソラリス』は原作よりも『惑星ソラリス』をベースにしていて、さらに絞り込んでそのテーマを描いている。ソラリスは表面が海に覆われた惑星で、その調査観測のために設置されている宇宙ステーションからの連絡が途絶えたため、精神科医の主人公(ジョージ・クルーニー)が派遣される。最後に連絡してきた人物が彼の友人だったことも派遣された理由の一つである。宇宙ステーションに乗り込んだ彼が見たもの、体験したことは現実ではあり得ない、信じられないものだった。惑星ソラリスの表すもの、その意思が、前作よりもわかりやすく描かれているかもしれない。

 

 もう一度原作を読み直したくなって、早川書房の『世界SF全集』のレムの巻を引っ張り出してきた。

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