映画『居眠り磐音』を見る
映画『居眠り磐音』は、佐伯泰英の時代小説シリーズを原作とした2019年の日本映画。このシリーズは本編だけで文庫本で51巻、サイドストーリーや主人公の息子空也の『空也十番勝負』に続いており、全部で何冊もある。そして私はそれをすべて読んだ。新刊が出るのが待ちきれず、出たらすぐ買い、その日のうちに読んだ。そこに描かれた世界は私の頭の中ではひとつの現実世界でもある。登場人物についても、それぞれの運命に感情移入したという、時代小説愛好家の私にとって忘れられない小説だ。
NHKの連続ドラマにもなった。主人公を山本耕史が演じていた。第一シリーズ、第二シリーズ、第三シリーズ、正月スペシャルなど、長いあいだ楽しませてもらった。こちらもすべて見た。原作の雰囲気をあまり損なわずに、しかし独自の世界を構築していた。
そしてこの映画も作られた。しかしテレビドラマでの山本耕史のイメージがあまりに強く定着してしまい、一度ならず衛星放送で放映されていたのだが、つい見そびれていた。今回NHKで放映されたので録画して見た。もともとの導入部は少し暗い。主人公の坂崎磐音の性格は春風駘蕩、明るい性格なのだが、この導入部での凄惨な事件を彼がどう乗り越えていくか、そして多くの人との関わりが彼を成長させていったかが物語の肝である。映画はその導入部をクローズアップしている。そこがメインといってもいい。作品全体のほんの初めだけであるが、それはそれなりに完結している。
松坂桃李の坂崎磐音は悪くなかった。おこんは、テレビでは中越典子、映画は木村文乃で、こちらは不思議なほどイメージが似通っていて違和感なし。映画は少し原作を改編している部分がある。一話で完結させるにはその必要もあったのだろうが、そこは少しおもしろくなかった。磐音の許嫁の兄であり、親友でもあった小林琴平(きんぺい)は、ある事件が理由で磐音と決闘し、討ち取られることになる。その琴平役を演じた柄本佑が今さらながら素晴らしかった。この人、やはり上手い。
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