陰謀論ともいうべき本をあえて読んでみる
ディープステートということばをご存じだろうか。略称をDSといい、闇の政府、地底政府などと訳される。アメリカ合衆国の一部、CIAやFBIが金融界、産業界と協力して、秘密のネットワークを組織して隠れた政府として権力を行使しているという陰謀論である。影の政府、などともいわれる。アメリカ人の半数がこのDSを信じているという世論調査もあるそうだ。いわゆるグローバリズムはこのDSの陰謀であるとされる。ネオコンなどはもちろんその一味である。
そのDSがトランプ大統領に敗れ、世界が激変する、という話を書いた本が元駐ウクライナ大使の馬淵睦夫の書いた『2025年世界の真実』という本だ・・・と表紙を見て思ったので試しに読んでみることにしたのだが・・・。何しろ帯には「この本は我々のDSへの勝利宣言でもある」と書かれていたのだ。
ところが、読んでみてびっくり、「國體」についての話が半分以上を占めていて、十七条の憲法や五箇条の御誓文、教育勅語の解説が延々と続く。ついには「本書を読んでいただければおわかりのように、保守とは天皇を正しく理解し、天皇をお守りすることにつきます」と結論づけられると、私には残念ながら理解の外である。残念ながら、「正しく理解」する能力が欠けているようだ。
「本書の基盤となっているトランプ大統領の勝利とは、アメリカ民主主義の勝利でもありました。アメリカは生き残りました。2025年以降の世界をロシアのプーチン大統領とともに、支えてゆくことになります。反民主主義の彼らが依っていた国連というグローバリズム推進機関は、存在価値を完全に失いました」・・・
どういう世界観かわからない。日本の大使を務めた人がこんな事を書いていることにびっくり!
とはいえ、就任早々にWHO離脱などの大統領令にサインし、FBI解体を進めようという側近を配するなど、このDSに対する戦いをトランプが進めているのだ、などといわれると、まさかと思いながら話のつじつまが妙に合っていたりするところがあっていてなんだかおかしな気分になってくる。
そもそもこの本は『2024年世界の真実』とか『ディープステート』とかいう、この著者の本を下地に読まないとならないようだ。残念ながらこの一冊で満腹したので勘弁してもらうことにする。
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