眠れなくて本を読み散らす
夜更かしが続いたので、昨晩は早めに就寝したのに、足がつって目が覚めてしまった。左足の腿がまずつり、それほどひどくならずに治まってほっとして、念のために漢方薬を飲んだのだが、今度は右足の腿がつった。それがなかなか治まらず、もだえていたが、しばらくして薬が効いたのかそれもなんとか治まった。しかし完全に目が覚めてしまったからなかなか眠れない。静かに眠りを誘うクラシック集、などという音楽をかけてぼんやりしていたが眠くならない。
仕方がないからスタンドの明かりを付けて本を読み散らした。なるべく読みにくい本を読もうと思って、張袋(ちょうたい)の『西湖夢尋』(東洋文庫)をまず開いた。この本の前半は詩文集で、漢詩が頻出し、私の力では読み切れない。読み切れないのは簡単に解釈しようとするからで、もっと腰を据えてイメージを喚起しなくてはならない。さいわい西湖には何度も行っているので、たいていの見所は承知している。西湖のある杭州には観光で五回、仕事で三回行っている。仕事で行ったときも、夜に西湖まで足を伸ばして湖岸のレストランで食事を摂ったりした。
わからないなりに何とか齧り付いていて、読み疲れたので後半を開くと、こちらは詩文集というよりも湖岸風景や、そこにまつわる歴史などについて記した紀行文ふうで、それなら読みやすい。明の末期の時代を感じた。そういえば読みかけて遅々として進まない余秋雨の『文化苦旅』の中に西湖のことを書いた一文がある。それを読み直した。そこに張岱について言及していないのが残念だが、その少し先の『夜航船』という章は張岱について書かれたものだった。『夜航船』は張袋の書き残した百科全書といえる本で、そのことが記されている。『夜航船』という船が実際にあって、それについての余秋雨の子供のころの記憶が併せて回想されていて、なかなか好い。どうして張岱が『夜航船』などという題を付けたかについての余秋雨の考えも書かれている。
それでも眠れないので(あたりまえか)、読み始めた永井荷風の日記『断腸亭日乗』(岩波文庫)を開く。ここにどんな本を読んだかも記されていて、興味深い。読んだことのある本や、知っている本があったりすると嬉しい。できれば読んでみたい本もある。大正七年に森鷗外についての言及があり、まだ会っていないと記述されていたので調べたら、森鷗外が死んだのは大正十一年で、存命なのであった。手を広げていくとキリがないし、読み疲れたと思ったところでひとりでに眠りについていた。
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