『心の傷を癒やすということ』
2020年に製作されたNHKのドラマ『心の傷を癒やすということ』(全四回完結)の再放送があったので見た。神戸地震から今年で30年、このドラマは、その神戸で精神科の医師をしていた主人公(柄本佑)の物語で、ほぼ実話をもとにしているようである。
精神科の疾患は実際に存在しているが、精神科医療というのは多分に砂上の楼閣の部分があるのではないかという気持ちが拭えないでいるのだが、この医師が目指すのは、砂上の楼閣を築くこととはまるで違う、精神的に苦しんでいる患者に寄り添うことで、その苦痛を和らげること、患者が孤独ではないのだと感じさせ、生きることに希望を持たせることに全力を注ぐことである。このドラマは精神科の医療には意味があるのだということを改めて教えてくれる。
病院で医師と患者が接するのは、長い時間を待たされたあげくに、わずかな時間でしかなく、しかも医師は患者の顔も見ずにカルテを眺め、パソコンの画面を見るばかりという場合が多い。精神科ほど患者と向き合い、会話する必要があるのに、同様なのが実情である。
この主人公は違う。しかも彼は在日であるという生い立ちをもつ。それに正面から立ち向かい、乗り越え、医師として苦悩しながらも静かに話を聞き続ける。阪神淡路大震災という、人々が身体と同様か、それ以上に心に傷を負ったとき、それを癒やすために彼がどうしたのか、それが静かに語られていく。見応えのある、とても好いドラマだった。
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