先祖返り
NHKのドキュメント番組『バタフライエフェクト CIA 世界を変えた秘密工作』を先日見た。CIAが、つまりアメリカが、イラン、東欧、チリなどで、どのような謀略行為を働いたのか、当時の秘密資料が期限が切れて公開されて明らかになったことをもとに再構成していた。それは公然たる秘密だった。なぜ中東で、そして東欧で、さらに中南米で、アメリカがかくも嫌われているのか、その理由がこの番組からも明確に読み取れる。アメリカの正義とは、それはイギリスなどのヨーロッパの先進国も同じだが、いかに自己中心的な利権確保のための建前であるか、改めて教えられた。
キューバに行って、アメリカがキューバに何をしていたのか、そしてなぜかくもキューバを敵対視しているのか、そのことの裏側を知った。行く前に本を読んで勉強したし、帰ってからもキューバ革命の背景についての本を読んだので、キューバで聞かされたことを鵜呑みにしたわけではない。だからチリのアジェンデ政権が軍事クーデーで倒されたのも、キューバでの失敗から学んだアメリカの謀略だったこともよくわかるし、ペルーのフジモリ大統領の失脚も、たぶんCIAが背後にいたのではないかと私は思っている。
ベトナムもそうだし、アフガニスタンでもそうだった。アメリカは結局すべてで失敗した。人心を摑むことができなかっただけではなく、嫌悪される存在になった。それはアメリカがその国の利権を権力者と分け合う構造から脱却できなかったからだ。
トランプはグリーンランドをよこせ、とデンマークに言った。よこさなければ経済制裁を科すぞ、と言い、軍事行動も排除しない、と言った。パナマ運河についても脅しを掛けて、戻せ、と言った。これのどこがプーチンのウクライナ侵略と違うというのか。カナダはアメリカに帰属しろと言った。仮にもよその国である。その国に向かって脅しを掛けて自国に従えというのは、異常なことである。その異常さを承知で公然とそんなことを言う。たぶんトランプ支持者たちは拍手喝采だろう。アメリカの本音の侵略主義が先祖返りで現れた。
冗談ですむ話ではない。これからは武力のある国が弱い国を切り取り放題、などという世界がやってくるというのか。恐ろしいことである。
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