激越な文章にあおられて熱くなる
谷沢永一の選集の、下巻の最後は『巻末御免』と題した、もともと『Voice』という雑誌の巻末に連載されていたコラムを編集した本をもとにしている。この下巻の責任編集と解説を担当した鷲田小彌太が言及しているが、この『巻末御免』の文章のトーンが途中から明らかに変わっている。読んでいて、私もそれを感じた。もともと手抜き、横着に対して厳しい谷沢永一だが、その激しさが増すのである。中身がたいしたことはないのに、いかにも偉そうな者に対して、厳しいのである。レトリックを駆使して、大丈夫か、と思うような激越さで罵倒する。私などいいかげんの極みで生きてきたけれど、まず矢面に立つことはないので安心であるが恐ろしい。コツコツとたゆまず努力している人が報われずに、そのような人物がのさばって安らかに死んでいくのがこの世の中、特に日本という国である。いくつもそういう事例を挙げてあって、谷沢永一に共感して、私も少し熱くなった。
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