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2025年1月10日 (金)

世の中が理不尽であることを直視する

 闘う哲学者・中島義道の本を読みながら、以下のような一節に、頷いたりしている。

 

「大人の要件として挙げたいのは、現実の社会における凄まじいほどの理不尽に立ち向かう能力である。自分を棚に上げて「この社会は汚れている!間違っている!」と叫んで周りの者を弾劾し続ける少年、「人生不可解!」と叫んで華厳の滝から飛び降りる青年は掛け値なしの子供である。大人とは、他人を責め社会を責めて万事収まるわけではないことがよくわかっている者、人生とはある人は理不尽に報われある人は理不尽に報われない修羅場であること、このことをひりひりするほど知っている者である。(いわゆる)正しい人が正しいゆえに排斥されることがあり、(いわゆる)悪い奴がのほほんとした顔でのさばっていることもあり、罪のない子供が殺されることもあり、血の出るような努力が報われないこともあり、鼻歌交じりで仕上げた仕事が賞賛されることもある。いや、そもそも人生の開始から、個々人に与えられている精神的肉体的能力には残酷なほどの「格差」があり、しかもこれほどの理不尽にもかかわらず・・・なぜか・・・「フェアに」戦わなければならない。こうした修羅場に投げ込まれて「成功している奴はみなずるいのさ」とか「世の中うまく立ち回らねば」という安直な「解決=慰め」にすがるのではなく、この現実をしっかり直視する勇気を持つ者、それが社会的に成熟した大人であるように思う。」

 

「子供は自分が他人を理解する努力をしないで、他人が自分を理解してくれないと駄々をこねる。他人の悪口を散々言いながら、自分がちょっとでも悪口を言われると眼の色を変える。濡れ衣を着せられると、もう生きていけないほどのパニックに陥る。いじめられると、あっという間に自殺する。だが、大人は、他人を理解する努力を惜しまず、他人から理解されないことに耐える。悪口を言われたら、その原因を冷静に追求する。濡れ衣を着せられたら、いじめに遭ったら、あらゆる手段でそれから抜け出すように努力する。このすべては・・・誤解しては困るが・・・「善いこと」あるいは「立派なこと」をする能力ではなく、この世で生きるための基礎体力なのだ。私はわが列島の津々浦々に響き渡る「思いやり」や「優しさ」の掛け声に反吐の出る思いであるが、こうした体力に基づいてこそ、他人に対する本当の「思いやり」や「優しさ」が湧き出すように思う。」

 

 こういうことは、大人から子供へ代々伝えられてきたことだったと思う。子供はそれを実社会で体験して大人となり、さらに次に伝え続けてきたはずだが、いつしかそういう伝達が失われてしまったようだ。いや、伝わっている人がたしかにいて、その人たちが、いまのところ、何とか社会を支えているのだと思う。もともとすべての成人が大人であったことなどなかった。しかしその割合が減り、それが本当に失われると、怨みと妬みにあふれた、分断の深まった社会を招来するのだろう。まさにそうなりつつある。

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コメント

 おはようございます。
本当に良い本をご紹介して頂きました。
私もこの一節には、そうだ全くそうだ頷きました。この現実を直視して、勇気を持って生きていくこと大事ですね。
今後、誰かに伝えていきたいと思いました。
ありがとうございました。

ひろべえ3様
コメントをありがとうございます。
中島義道という人は、かなり個性の強い人ですから、その辺を考慮してお読みください。

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