松田優作の初出演映画であり、世紀の駄作
映画『狼の紋章』は1973年の日本映画。平井和正の同名の小説を原作とする。平井和正は一時期私が濫読したSF作家で、この原作は彼のウルフガイシリーズの一作である。あの『幻魔大戦』シリーズも平井和正の原作であり、桑田次郎の漫画で有名な『エイトマン』シリーズは主に平井和正が原作を書いている。
だからこの映画が上映されたときには真っ先に見に行った。そして映画館を出るときには怒りに震えていた。原作をその通りたどってはいるのだが、ほとんど日活ロマンポルノとしか言いようのないものに仕上げられていた。台詞回しのお粗末さ、特殊撮影のさらなるお粗末さ、陳腐さ、メイクのひどさにがっかりする以上に腹が立ったのである。
その映画がWOWOWで放映された。もっとも見たくないものをあえて直視するという自虐的な思いと、その当時はまだそのすごさを感じることができなかった松田優作を改めて見直して見たいという気持ちがあった。
主役の犬神明を演じたのは志垣太郎。それなりに演じていたのだが、シナリオがひどすぎるから大根役者にしか見えない。そして敵役の羽黒獰を演じていたのが映画初出演の松田優作なのである。私の、原作から描いていたイメージの羽黒獰から見ると、スリムすぎることに初めて見たときには違和感があった。しかし、いま見たらこんなお粗末な映画の中で唯一まともに演じて光彩を放っていることを今さらながら強く印象づけられた。
ほとんど見るのが苦痛の映画ながら、最後まで見たのは松田優作のおかげである。
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