『オッペンハイマー』
2023年のアメリカ映画『オッペンハイマー』を見た。主演のキリアン・マーフィーの独特の風貌が印象的な映画であった。マット・デイモンやロバート・ダウニー・Jrが競演しているが、デイモンはわかったけれど、ロバート・ダウニー・Jrはエンドクレジットで初めて知った。オッペンハイマーの偏執狂的な敵役、ストローズ役である。原爆の開発と製造を主導したオッペンハイマーを描いたこの映画は、数々のアカデミー賞を受賞した。
この映画は原爆の本当の恐ろしさを描いていない、という批判があるようだ。アメリカが原爆を日本に投下したことをさまざまに正当化して、それを受け入れているアメリカ人がこの映画を見て、原爆の恐ろしさに気がつくということにはならないだろう。この映画は原爆の恐ろしさを直接描いた映画ではないのだから。しかし、その恐ろしさを知っている人間にとっては、直接描かれていないからこそ根底的な恐ろしさがわかるようになっていると思う。
人間の愚かさ、醜さを、オッペンハイマーに対する毀誉褒貶を描くことでとことん表現し、そのような人間が、持ってはならない核兵器という兵器を生み出し、所有してしまったことの恐ろしさをこの映画は描いているのだ。兵器は人間が使うもので、その人間が愚かであればどうなるか、その恐怖こそがこの映画のテーマであると思う。
この映画に描かれている時代のアメリカと、いまのトランプ政権下のアメリカが、どちらが恐ろしいのか、世界の情勢によっては、人類全体が取り返しの付かない体験をすることになるだろう。そのことをこの映画の、地球全体に広がって行く炎のラストシーンが表していて、それこそがこの映画の語りたいことなのだと思う。
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