加齢臭
かすかに自分の加齢臭を感じることがある。自分の臭いというのはいつも嗅いでいるので感じにくいものだが、それでも感じることがあるということは、他の人にはもっと感じられていることであろうと思う。歳をとればしかたのないことで、ことさらそれを気にするつもりはない。
まだ幼い頃、母方の祖父母のところへよく行き、一人で泊まった。夜は祖父と祖母が、どちらが私と寝るかで争ったりした。冬など、私と寝ると暖かいのだと祖母は言った。祖母と寝ると、ついしなびた胸を触ったりしてしまう。祖母とばかり寝ると祖父がかわいそうに思って、ときどきは祖父と寝た。祖父は寝物語に田舎の昔話などを聞かせてくれた。どちらと寝ても、独特の臭いがした。今思い出す祖父母の臭いは、老人特有の加齢臭である。でも私にはその加齢臭はそのまま祖父母の思い出の臭いである。子供心にイヤな臭いだと思ったことはすこしもない。
世の中は無臭を求めている。求めるあまりそれにこだわり、過敏にすらなっているが、人間が生き物である限り、臭いを発するものだ。どんどん人工的に無臭になっていくのは生命力の衰えではないか。自然の匂い、特に土の匂いや春の草いきれなどを嗅ぐと、なんだかよみがえるような心地がする。日向のネコのいい匂いなど、忘れられない。
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