胸に響いたドラマ
録画してあったNHKの『憶えのない殺人』というドラマを見た。小林薫と尾野真千子が出演するから期待していたが、期待以上にこちらの胸に響くドラマだった。長く駐在所に勤務して地元の人たちにも親しまれ、いまは引退して独り暮らしの佐治英雄(小林薫)のもとを、ふたりの刑事(ひとりは尾野真千子)が聞き込みのために訪ねてくる。彼の管轄だった地域で殺人事件があったという。殺されたのは、ストーカー行為で以前彼が逮捕したことのある男だった。
捜査の段階で、犯行のあった深夜の時刻に佐治を見かけたという証人が現れる。しかし佐治には憶えがない。しかし証人が複数現れ、彼の姿の映った監視カメラの映像も見つかり、刑事たちの疑いは次第に濃厚になっていく。佐治には認知症の症状が現れ始めていて、それを否定していた本人も、次第に自分を疑い始めていく。
胸に響くのは、佐治が現実をしばしば失覚する様子が描かれるからで、その不安がひとごとではなく、自分自身のことのように感じてしまったからだ。恐ろしいことである。手許がおぼつかなくなったり、錯覚をしたり、無意味な買い物を無意識のうちにしたり、という様子は明日にも自分がしそうなことに思えたからだ。もう、そういうことをしているのに、自分で気がついていないだけかもしれない。
はたして彼は本当に犯人なのか、自分で自分を疑い、確認を進めていく。すべてが明らかになったとき、彼は大事なことを忘れていたことを知らされる。そして忘れていたことにこそ、意味があった。エピローグが特に胸にしみる。
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