『ビッグ・フィッシュ』
『ビッグ・フィッシュ』は2003年のアメリカ映画である。監督はティム・バートン、主演はユアン・マクレガー。プロローグの映像から、一体どんな物語なのだろう、とわくわくさせられる。ティム・バートンの作る映画は独特の映像世界を楽しませてくれて好きである。この映画も見終わっておおいに満足した。
父と子の確執、そしてその関係の融和と和解。このテーマを表現するには、「息子」が「父親」になるためのイニシエーションを描くことになる。父親が息子に語り聞かせたこと、語らなかったこと、を通して伝えたかったものが何だったのか、この映画では誇張された、ほとんどホラばなしのオンパレードのような父親の物語が、どういう背景を持つものだったかに息子が気がつき、父への反発が共感に変わるという筋道をたどる。
主人公のエドワード・ブルーム(物語の中の父親)を、若いときはユアン・マクレガーが、老齢になってからは名優アルバート・フィニーが演じている。脇役にヘレナ・モナム=カーターやスティーブ・ブシェミなど異色の俳優(だから好き)が出演しているのも嬉しい。
私自身が父に反発し、父と普通に会話を交わすことができるようになったのは、息子が生まれてからであった。父親は子供の壁であるべきだ、ということをいつしか理解したし、その壁を乗り越えることによって子供は初めて大人になることができるのだと思っている。父がどんな思いでいたのか、息子が反発しているときにどれほど寂しい思いをしていたか、いまになってようやくわかったりしている。父親とはそういう役割のものなのだと思う。男はつらいのである。
先月末に曾野綾子が亡くなったという訃報をさきほど知った。享年93歳。彼女のコラム風のエッセーをずいぶんたくさん読んできた。いっていることに共感したし、影響もずいぶん受けた。冥福を祈る。
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こんばんわ!
俺も父との葛藤がありました。どうしても農業を継がせたかったため、俺の進学校は農業高校だと担任と
決められたことが発端だったと思います、加えて丁度反抗期が続いてこともあってなかなか口もきけず
はっきりした和解が出来ないままに父を送りました。今、父の享年を過ぎ、あの頃父と酒を呑んだり
すれば良かったと後悔しています・・・父は兵隊の経験から「食」が大事であり、農家こそが一番いい
仕事場と思っていたようです。だから、県道が通る事により田んぼが買収されたあの夜、父が泣いて
いた事が忘れられません・・・
投稿: でんでん大将 | 2025年3月 4日 (火) 20時36分
でんでん大将様
お気持ちが少しだけでもわかる気持ちがします。
私も、父の人生について聞いておきたかったことが山のようにあるのに聞けなかったことを、取り返しの付かない今頃になって痛切に後悔しています。
特に戦争中のことなど、聞いておくべきだったと思っています。
父が私のことを、冷たい、というような言い方をしたことが一度だけありました。
よほどの思いがあったのでしょう。
投稿: OKCHAN | 2025年3月 4日 (火) 20時55分