『移行期的混乱』
平川克美『移行期的混乱』(ちくま文庫)という本を読んだ。副題は、「経済成長神話の終わり」。私がこの頃ずっと考えてきたことを、とても明快に、そして整理して提示して見せてくれていて、同意することだらけであった。しかもこの文庫化する前の単行本として出版されたのが、2010年であることは驚きである。引用して使われている統計数字は、だから古いのだが、その2010年からすでに15年もたっているのに、著者のその推測を裏切るような現実の推移は生じていない。つまり時代を透徹して見通した見通しは、間違ってはいないということである。
日本の経済衰退、少子高齢化などについて、様々な原因究明が行われ、語られてきた。根底の原因がわかればその対策ができる、という想定である。しかし、この本が指摘しているのは、そもそもその原因究明や対策を考えるその考え方そのものが、答えを導き出せるような考え方ではないのではないか、ということである。だからそのような対策はことごとく一時的な弥縫策に終わり、失敗する運命にあるという。まさに私もそう思っていたところで、原因は人々の価値観の変化こそがこの事態の原因で、その価値観の変化は不可逆的である。今更価値観を元になど戻せないのである。
ある時代を生きる人々の大まかに共通する価値観をパラダイムという。そのパラダイムは時に大きく転換することがある。まさにそのような「移行期」がやってきているのである。時代を少し俯瞰的に見ることで、世の中の流れを見直すのにこの本はおすすめの本である。
著者は内田樹の親友で会社経営者。内田樹と高橋源一郎が巻末に解説を書いている。
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