顔ぶれは立派でも
『和辻哲郎座談』(中公文庫)という本を読了した。倫理学者の和辻哲郎(『古寺巡礼』などで有名)のまとまった文章は読んだことがないが気になる人の一人である。だからこの本を読んだのだが、あまり得るものはなかった。
座談というのは対談も含めるらしい。1935年から1955年くらいまでの、和辻哲郎が参加した太平洋戦争前後の対談や座談会が収録されている。多士済々で、有名どころで言えば、安倍能成、内田百閒、高坂正顕、幸田露伴、小宮豊隆、斎藤茂吉、志賀直哉、竹山道雄、辰野隆、谷崎潤一郎、寺田寅彦、徳田秋声、長與善郎、長谷川如是閑、柳田國男など。しかしながら、有名どころがたくさんいれば座談の内容が素晴らしくなるかといえば、必ずしもそうでないらしく、互いが勝手に言い合っているだけで議論が少しも深まった気配がない。
とはいえ一対一の対談でもあまり内容があるわけでもないのは、必ずしも和辻哲郎に問題があったわけではなくて、テーマの選び方や選んだ相手が悪いのだろう。この対談や座談が時系列で並んでいたならそれなりにあの戦争を各人がどう捉えたのか読み取れるのだが、それがバラバラだから、みんな何か大きな災害が頭の上を通過しただけ、というように捉えているように見えてしまう。自分の問題として深く考えたのか考えなかったのか、それがこの座談からは読み取ることができない。
内田百閒や志賀直哉、柳田國男など、私なりに日頃評価している人たちもこの座談では精彩を欠いている。夏目漱石に関しての座談でも、珍しくこのような会に加わった内田百閒(漱石の最後の弟子とも言われる)は半ば過ぎまで一言も発しないし、意見を求められてもあまり熱のない答え方をしていた(先輩に遠慮していたのかもしれないが、らしくない。おもしろくなかったのだろう)。内容を読み取る力が私に足らないからかとは思うが、この本は私にとって時間の無駄だった。
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