『黄金』
『黄金』は1948年のアメリカ映画。監督ジョン・ヒューストン、主演はハンフリー・ボガート。ハンフリー・ボガートといえば名作『カサブランカ』、ハードボイルドの『マルタの鷹』、そして『アフリカの女王』や『キー・ラーゴ』などがすぐ思い浮かぶ、大好きな俳優だ。それがこの『黄金』ではとことん落ちぶれた汚れた男を演じている。
流れ流れてメキシコでくすぶり、人に小銭を恵んでもらったりして食いつないでるダブス(ハンフリー・ボガート)という男は、似たような生き方をしているカーティンとたまたま知り合い、安宿で金探しの老人の話を聴く。金は人を迷わせて時に狂わせる、という老人に、ダブスは、俺は金が多かろうが少なかろうがそれで変わったりしない、と豪語する。老人がすでに目星をつけた金鉱のありそうな山はあるのだがそのための資金がない三人だった。しかしいろいろ幸運なことがあった後に、なんとか金の工面をつけ、山賊の横行する危険な山へ分け入っていく。
苦難の末に小さいながら砂金の取れる場所を見つけた三人は少しずつそれを採集していく。そうしてそれがたまっていくとそれを互いに分けて自分なりの隠し場所に蓄えていくのだが、ダブスは次第に仲間に対して疑心暗鬼になりだし、少しずつ常軌を逸し始める。そんな中、金探しの第四の男が現れ、仲間に加わろうとする。仲間に入れるか始末してしまうか迷っている時、山賊の集団が彼らの銃を奪うためにやってくる。
さまざまなドラマが挿入され、ついに人間としての境目を踏み越えてしまったダブスは、金を独り占めしようとして恐ろしい行動に出る。その顛末は・・・。最後は金探しの老人の哄笑で終わる。人間の欲望の愚かさとむなしさを神のいたずらだといって嗤うのだ。「ダブスは悪人ではない。正直すぎる男なんだ」という老人の言葉が重い。
映画の出だしのシーンでダブスがたびたび金をたかる紳士の役で監督のジョン・ヒューストンが出演している。金探しの老人役のウオルター・ヒューストンは監督の実父である。この映画でジョン・ヒューストンはアカデミー賞の監督賞、そしてウオルター・ヒューストンは助演男優賞をとっている。賞にふさわしい見応えのある映画だった。
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