終日読書
昨朝、宿の窓から見える景色は雲に覆われていて(目の前が山なので、文字通り雲が空から覆い被さっていた)、これは終日雨かと思われたが、案に相違して次第に明るくなり、ときどき日が差す好天となった。散歩に良さそうだが、散歩に出るには着替えしなければならず面倒なので、そう思うだけで実行せず。今朝は窓を叩く雨音に目が覚めたがいまはおさまっている。予報では本日は終日雨らしいが、どうだろうか。そう書いているうちに雷が鳴り始めた。
テレビはニュースを見るために一二度つけただけで、読書したりうつらうつらしている。そもそもここに来て世間と縁が切れた心地がしていて、ニュースに少しも関心が動かない。今回は本を五冊持参している。たいてい一二冊読めればいい方で、もってきてそのまま持って帰ることが多いのだが、読みかけた本もあったので、昨晩までに二冊読了。もう二冊くらい読めそうな気がする。
永井荷風の『断腸亭日乗』第二巻をようやく読了した。大正十五年(昭和元年)から昭和三年までの日記である。岩波文庫では今回すべての『断腸亭日乗』をあらたに刊行しつつあり、全九巻となる予定である。先日第四巻まで出版されたので入手した。第五巻は来春だろうか。年内には第三巻まで読み終えて、第四巻に手を付けたいと思っている。
第一次世界大戦のあとの好景気により、東京は沸き立っていたが、そこへ関東大震災が起きてその復興のための負担と好景気の終了により世間には暗い影が差し始める。社会不安が次第に増大し、とげとげしい雰囲気になっていく。人々の自己主張は激しくなり、マスコミや主義者が幅をきかせていく。荷風はそんな東京市中をひたすら歩き回る。東京の変貌は止まらない。傍観者荷風は自身の心身の衰弱をしきりにうったえる。だから創作はほとんど出来ない状態に見える。それでも日記に書かれた読書の量は多い。外国の本や古書店で手に入れた先人の書いたもの、古典漢籍、そして論語や老子、荘子まで読み、自分自身を磨いている。知人友人の死も続き、五十歳を迎えて病気がちになり、自身の人生の終焉も近いと思いだしている。
世の中はさらに暗くなっていく。荷風は世の中の移り変わりをどう捉え、どう流されていったのか。時代を荷風の目で見せてもらっている。
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