『沈黙する知性』
内田樹と平川克美の対談本『沈黙する知性』(夜間飛行社)を読了した。「みんなが感情的になっているときは発言したくないというのが正直な気持ちだね」ということばに同感である。感情的になると複雑な思考が出来なくなり、善か悪か、損か得かという二元論に話が落とし込まれてしまう。百家争鳴、互いが自分の主張を声高に言い合っているのを見ると、あたかも議論が白熱しているように見えるけれど、実はそこには自己主張と相手の非を鳴らすことのみあって、相手の話を聞くという知性的営みがみえてこない。
本物の知性は孤独な沈黙の中で、「ありえたかもしれない世界」を想像しているのだ、ということばは、世界の見方を変える。こんな世界ではなかったかもしれない世界を、現実世界の向こうにオーバーラップして見る力、想像する力という考えに感じるものがある。
むかしコリン・ウィルソンという人の著作にはまったことがある。後にオカルトや猟奇殺人などの方向に走ったのでついて行けなくなった(途中までついて行ったけど)が、最初に読んだ『アウトサイダー』という本にとにかくしびれたのだ。アウトサイダーというのはアウトローではない。普通の人が無意識で生活しているときに、意識して生きている人、ということなのだと私は了解しているが、それはつまり覚醒している人、という意味である。気がついてしまった人、当たり前にみえている世界を一皮めくってしまった人という意味である。
その覚醒している人、アウトサイダーと、この『沈黙する知性』に書かれている「本物の知性」は、ある意味でつながる気がしたがどうだろうか。本物の知性として何人かの名前が挙げられている。その最後にとくに吉本隆明が語られ、その系譜を継がなければならないと結んでいるが、学生運動出身者らしいことばだ。それはともかく、呉智英にこき下ろされていた吉本隆明、私には全く歯が立たなかった吉本隆明に俄然興味が湧いてきた。なにしろ呉智英は吉本隆明をこき下ろすためにとことん詳しく読み解いてくれたので、ちょっとだけ分かり始めてしまったのだ。
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 『異邦人』(2026.08.18)
- 『土偶』(2026.08.16)
- 『白峰』(2026.08.15)
- 『江口』と『西行桜』(2026.08.12)
- 『故宮 2』(2026.08.12)


コメント