他人の目
自分の愚かさとみっともなさを知るには、他人の目を持たなければならない。それを持ち合わせていない人のなんと多いことかと思う。そういう人を恥知らずという。そういう自分だって、自分の愚かさ醜さを見たくないから、正面からではなく、目を背けながら他人の目で自分を見ているけれど、でも曇ったり濁ったりはしているものの、持ち合わせはある。
その話とは関係ないが、またいい映画を見た。2013年のアメリカ映画『大統領の執事の涙』という映画だ。綿花畑の奴隷小作人の息子として生まれた主人公(フォレスト・ウィテカー)が克己心と優れた人間性を武器に、ついにはホワイトハウスで大統領の執事の一人として働くことになる。そうして歴代大統領に愛され、一目置かれるのだが、それは黒人である自分をとことん殺し続けることに他ならなかった。
仕えた大統領は、アイゼンハワー、ケネディ、ニクソン、ジョンソン、レーガンなどである。当然ホワイトハウスが舞台であるから、アメリカの国そのものの現代史をたどることになる。そして同時に人種差別の国アメリカの歴史をたどることにもなる。それぞれの大統領の強さと弱さ、賢さと愚かさ、それらを目の当たりにしながら、ひたすら飲み込み押さえ込んで生きていく主人公の姿に、いつか崇高なものを感じてしまう。執事を自らやめて二十年、ついに黒人のアメリカ大統領オバマが誕生し、そのオバマからホワイトハウスに招待される。世話する側ではなく、される側として賓客たちとともに座る主人公に、どことなく晴れがましさよりも戸惑いが見られるのが心に刺さる。彼には誰にも侵されない誇りがあるからこその戸惑いなのである。
いい俳優がたくさん出演している。ロビン・ウィリアムス、マライア・キャリー、ジョン・キューザック、アラン・リックマン等々。もちろん主人公を演じたフォレスト・ウィテカーが断然素晴らしい。この人はどんな役もこなす名優だと、今回特にそう思った。
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