『日本の村・海をひらいた人々』
宮本常一の『日本の村・海をひらいた人々』(ちくま文庫)を読了した。もともとは二冊の少年少女向けに書かれた民俗学の入門書のような本を合本したものである。だから語りかけるようなやさしい文章で書かれていて読みやすい。宮本常一について、民俗学というのはこんなものではないという批判もしばしばあったというが、私は逆に民俗学というのはまさにこのようなものであろうと思う。
車窓から眺める民家の屋根や家のかたちを分類し、そこからさまざまな考察を引き出していく。臆せずにそのような家を訪ねて家の造りを見せてもらい、知見を補足していく。古老から古い伝承を聞き書きするばかりが民俗学ではないのだ。一つ知ったらそこからさらに観察をして考察を深め、互いを関連させていく。過去を想像する。それにはそれなりの歴史的背景の知識の裏付けも必要だ。記録するだけが民俗学ではないのだ。
この本の後半では、漁村と漁法の成り立ちと変遷がさまざまな切り口から語られていてとてもおもしろかった。海に近いところで育ったし、小学生の時に九十九里浜沿いの集落の成立と変遷を詳しく教えてくれる先生がいて、それを思い出したりした。鯨漁の時代による進化、幕末の開国のきっかけが鯨漁にあるという視点など、承知している知識の断片が有機的につながっていく面白さを教えてくれる。
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