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2025年10月25日 (土)

『第三次世界大戦はもう始まっている』

 先日、エマニュエル・トッドの『西洋の敗北』を読了したが、補足的に彼の本が読みたくなり、『第三次世界大戦はもう始まっている』、『老人支配国家日本の危機』という二冊の本を新たに取り寄せて読んでみた。『西洋の敗北』はハードカバー本だが、取り寄せた二冊は新書(文春新書)である。

 

 歴史人口学者で家族人類学者の彼が、ソビエト崩壊を予測し、トランプ大統領誕生を予測したのは、彼が統計的なある事実を元に理論的に予測したものだ。その彼が現在の、そしてこれからの世界情勢について予測し、さらに少しだけ日本の現状と問題点について語っているのが今回取り寄せた二冊の本である。これらの二冊は『西洋の敗北』に結果する考察をわかりやすく書いた本で、書かれた時期も先行する。私の思っていたとおり、『西洋の敗北』に書かれていたことをより理解しやすくなる書き方の本だった。というよりほとんど聞き書きを元にしているので、読みやすいのである。だからこちらを先に読んでいれば、もっと『西洋の敗北』という本が理解できたかもしれないけれど、もう一度読むのはさすがにちょっと先になってからにしたい。

 

 彼の着目点は人口動態、そして平均寿命の変化、そして文化人類学的な民族別の家族形態の類型分類である。それがどうして予測のポイントになるのか、それはこれらの本を読むとよくわかる。三冊とも同じことをそれぞれに書いているのでちょっと読み飽きた。

 

 アメリカの現状について書いている著者の分析には、薄々感じていたことではあるけれど、目からうろこが取れた気がした。好き嫌いや善悪ではない視点から、感情抜きの予測を立てている。感情的にはトランプを嫌悪しながら、トランプ誕生の必然性、そして必要性を語る。そしてロシアや中国に対してはその脅威は今言われているほどのことはないという。ロシアはともかく、中国に対しては、彼はユダヤ系のフランス人であるから、日本人ほどの切実感がないのだろう、私にはそこまで楽観できない。

 

 アメリカの白人の、中年男性の平均寿命が短くなっているという。寿命を縮めている原因が疾病によるものよりも、自殺やアルコール中毒、薬物中毒(オピオイド禍)によるものであることに著者は着目している。さらに実体経済の空洞化がもう取り返しがつかないほど進んでしまい、しかも技術力を支える人口は見かけ上維持しているようであるが、実はアメリカ人以外、とくにアメリカ在住のアジア人の割合が急増していることに注目している。さらに知能指数調査では白人以外と較べて、白人に有意な低下が見られている。それが一時的なものなのかどうか。しかしとにかくアメリカは変貌しつつある。いままでのアメリカとは違う国になっているように見えるが、実は先祖返りしているだけかもしれない。そのことをこれらの本から(ある切断面からだけではあるが)読み取ることができた。

 

 改めて彼がEU体制の西ヨーロッパにかなり失望し、絶望しているように感じた。その通りなのかもしれない。彼の視点に重ねて見ると、ウクライナでの戦争の意味が少し違って見えてくる。ただ、彼がドイツという国を嫌悪していることも念頭に置く必要があるかもしれない。

 ところで『老人支配国家 日本の危機』はいささか羊頭狗肉の題名なので、それは承知して購入して欲しい。

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