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2025年10月17日 (金)

縄張り

 先般の北関東の旅で足尾に行った。足尾は日本有数の銅山だったがだいぶ前に閉山している。一時期、石見銀山にならって世界遺産にエントリーしようと試みたようだが、町を挙げての活動とまでは行かず、いまはひっそりとしている。ずいぶん前から北関東の友人を訪ねるついでにこの町に立ち寄り、定点観測のように昔の銅山に働いていた人たちの住居などの写真を撮ってきた。足尾の写真の何枚かは次回に掲載する。

 

 渡良瀬川はこのあたりが源流で、明治時代から鉱毒水の問題があって日本最初の公害訴訟なども起きている。志賀直哉の祖父や父は古河鉱業に出資し、そのことで志賀直哉は父と激しく対立した。渡良瀬川は鮎が棲まない、などといっていたものだが、現在はずいぶんきれいになったようだ。

 

 その足尾の前を通る渡良瀬街道・国道122号線は、いまはバイパスができて足尾の町中は通らない。その旧道はセンターラインのない部分もあって狭い。しかし足尾らしいところを見ながら走るにはこの旧道を通る。今回その旧道で猿の家族らしい五六匹を見た。まったくの市街地である。私の車が通るのにワキへ逃げ込むものもあるけれど、子供を連れた母親は道路上に居座ってこちらを平然と眺めている。すれすれを通り抜けざるを得ない状態であった。母親の目は自分のテリトリーをよそ者が通る、というように見えた。

 

 日本中で獣たちが人間の居住領域を徘徊し、人を恐れないばかりか人を襲う。人が怖いものではないと学習してしまったからだと思っていたが、だからといってむやみに人を襲う熊などを見ていると、奇妙な思いがしていた。しかし、熊にとってはすでに人の住む市街地も彼らのテリトリー、縄張りとして認識されるようになってしまったのだと気がついた。彼らの縄張りを荒らす人間に怒り、排除しようとして攻撃しているのだ。だから鈴を着けようが大声で歌を歌おうが人間が来たから逃げる、などということなく襲いかかる。いまは人間が邪魔者、侵入者なのだ。彼らの侵入をやさしく追い返すだけ、という対策をとり続けた結果、人間の居住領域は彼らの縄張りとして承認されたと見なしたのであろう。

 

 中国は日本の、そして周辺国の縄張りでやりたい放題である。ロシアもしかり、イスラエルもしかり。やさしく退去していただくという対処を続けた結果、彼らにとっては縄張りが無限に広がりつつある。縄張りは守らなければ守れない。当たり前のことであろう。

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コメント

おはようございます
ロシアは人口が日本に毛が生えたくらいしかいないのに実に日本の数十倍の国土を持っています。これはまさに”大身知恵が回らず
”状態でしょう。
ロシア人の友人がこれはロシア人の本音だ、と言って教えてくれたのですが、ロシアがこんなアホみたいに領土を増やしたのは根底に侵略される恐怖からだ、と言います。モンゴルにしてやられて以来、ロシア人はまさにこの点で強迫観念を持っている、とその人は言っていました。まあ、それでさらにウクライナも獲るともなると彼らの強迫観念は”病膏肓に入る”と言ったレベルでしょう。
では、
shinzei拝

shinzei様
そういう面もあるのでしょうね。
中国にも同様の精神的強迫観念があるような気もします。
実際に中国は侵略を受けていますし。
足るを知る、というのはなかなか人間には難しいことなのでしょうか。

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