序文から
池田雅之の『小泉八雲』という本の序文から
八雲は日本人だったら見落とすであろうさまざまな日本人の美質を拾い出してくれた作家である。八雲の日本および日本人へのアプローチの仕方は、異国趣味の域を出ないという批判もある。また八雲の日本びいきに対して、点の辛い欧米人も多いことも承知している。しかし日本文化に対し、共感的にあるときは救済的に関わることの出来た八雲のような柔らかなまなざしを持った人格は、私たちにとって大切な存在だと思う。
(中略)
八雲は日本の美と霊性の発見者だっただけでなく、その発見を通じて日本人に自信を与えることの出来た人物でもある。そういう意味で、八雲は日本および日本人に対して、日本人の自虐性や自己肯定感の低さに救済的に関わることの出来た芸術家であり、教育者であったともいえるのではなかろうか。
私は、この小著を八雲のそうした日本発見と自己発見の旅の道連れの一人として書いたつもりだ。読者の皆さんにも、八雲の、そして私の旅の道連れになっていただければ嬉しい限りである。八雲の日本人と日本文化に寄せる穏やかな視線をとおして、私たちも日本の麗しさ、その美の発見者になれば、こんな喜ばしいことはない。
私もこの歳になってようやく日本の美点を感じることができるようになりつつある。それは当たり前だと思っていた美点が、日本からどんどん失われていくような危うさを強く感じるようになったことからの実感のように思う。これからどうなっていくのか、ということはもう心配してもしかたがないと思っている。それよりも、八雲の思いを多少とも我が物とし、そういう美点をあらためて知りたいと思っている。そうして、日本からそういう大事なものが失われる危うさを語り続けた鷗外や漱石や荷風の思いをこそ追体験し、共感することにしている。
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