ロレンスから
コリン・ウィルソンの『アウトサイダー』という本の新しい章に入ったら、T・E・ロレンスについて論じられていた。T・E・ロレンスとはあの映画『アラビアのロレンス』のロレンスである。トルコ帝国を滅亡に追いやり、しかしロレンスがそのために糾合したアラブ人たちやペルシャ人たちが期待した結果にならずに、旧トルコ帝国はヨーロッパ列強によってズタズタにされた。それが未だに尾を引いていることはご承知の通りである。西アジアの民からすればロレンスは裏切り者である。そしてその自覚は誰よりもロレンスにあった。後に自殺に近いオートバイ事故で亡くなったことは、私は『世界残酷物語』の中のシーンで覚えている。
そのロレンスの文章がいろいろ引用されているのだが、その一つに
われわれは、ある澄みわたった明けがたに出発した。それは、陽光が五感を目覚めさせながら、なおかつ、一夜の思考に疲れた智力がまだ床についている明けがたの一つであった。このような朝には、一時間や二時間のあいだ、世界のもの音、香りや色彩が、思考を通過せず、思考によって典型化されずに、個々のものとして人間に直接つきあたってくる。これらのものが、それ自体で満ちたりた存在であるように思われ、創造に意図と慎重さとが欠けていることが、もはや気にさわらなくなるのだった。
こういう世界の見え方感じ方をする瞬間を持った人間を、コリン・ウィルソンは『アウトサイダー』と見なしたのだろうか。まだそれを断ずるには途中である。
ただ、ここにある感覚は、ラフカディオ・ハーンのオープンマインドと通じるものがあるのではないか、と私は関連付けておもしろいと思うのである。
« 『新編 日本の面影』を読み終える | トップページ | 青森沖地震 »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 格差社会(2026.01.13)
- 力のある言葉(2026.01.03)
- 『小泉八雲 今、日本人に伝えたいこと』(2026.01.02)
- 『日本の面影Ⅱ』(2025.12.31)
- 『落語手帖』(2025.12.30)



コメント