「たつの」といえば
たつのの母娘殺害事件の犯人らしき人物は逃亡したままで、いまだに捕まらない。職務質問した高砂市の警察官がわざわざたつのまで送り届けて取り逃がしたことになっているが、警察官もプロである。そのプロが怪しいと思えなかったくらい犯人は支離滅裂だったのだろうと想像する。十年前に隣に住んでいたということだが、そのあとの交流があったようでもないから、犯人らしき男の頭の中にどんな妄想が蓄積されていたのか想像を絶する。当初はさらに誰かに危害を加えるのではないかと心配したが、どうもいまになっても見つからないというのは、どこかで既に死んでいるような気もする。
たつのには一度行きたいと思いながらまだ果たせていない。どうしていきたいと思ったのかといえば、『男はつらいよ』で寅さんが訪ねた街だからである。そうしたら『鶴瓶の家族に乾杯』という番組でたつのを訪ねているではないか(来週続編があるようだ)。この番組はそれほど好きではないのでめったに見ることはないが、たつのにはそのように思い入れがあるので見るともなく見ていた。そうしたらゲストの劇団ひとりが『男はつらいよ』のシリーズの中でも大好きな作品なのだと、記憶するシーンを語って見せ、そしてそのシーンの場所を見て感激していた。
私もシリーズの中でも特にこの龍野を描いた『寅次郎夕焼け小焼け』が好きである。ヒロインの龍野芸者を演じたのは太地喜和子、野放図に明るく見えていながら、実はさびしいという役柄をみごとに演じていたのが忘れられない。わざわざ龍野と書いたのは、そのときはまだ龍野という地名表記だったからである。寅さんシリーズは三分の二くらいは劇場で見ているし、すべてをブルーレイディスクにコレクションしている。
そこで昨晩久しぶりにこの『寅次郎夕焼け小焼け』を見た。龍野といえば三木露風で、三木露風といえば『赤とんぼ』であって、だから『夕焼け小焼け』なのだ。その龍野出身の日本画の大家という役柄で宇野重吉が飄々とした、しかし芯には譲ることのできないものを持つ毅然とした役柄を演じていた。渥美清も宇野重吉も既に鬼籍に入った。桜井センリの芸達者、ちょい役で出ていた佐山俊二や大滝秀治なんかが懐かしい。榊原ルミが出ていた、そして岡本茉莉が出ていた。榊原ルミはヒロイン役を演じたことがあるし、岡本茉莉は寅さんシリーズの常連で、わたしが密かに好感を持つ女優である。
あらためて、いつかたつのの街を歩いてみたいと思った。
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