『良心的』
頭が生ぬるくなりかけているので、久しぶりに山本夏彦を読んだ。二ページから三ページの短文のコラムをぎっしりと詰め込んだ『良心的』(新潮文庫)という本で、短い中に意を詰め込んでいるのでレトリックは二転三転して、それについていくうちに、そのわさびの辛さが効いてくる。ぼんやり読んでいては意味がつかめないのだ。こういう文章が書けたらいいなあと思うが、この文章を形にするためにどれだけの推敲を重ねているのか、それを想像するととても私に出来るものではない。せいぜいそれとなく影響を受けて似た部分がたまたま出現するとうれしい、というところでまでである。
諧謔に紛れさせることはあっても、あまりプライベートなことをストレートに書かない著者が、いつもよりは自らのことを書いていたりするのは、このコラムを書いている途中に細君を亡くしているからで、さらりとした言葉がかえって埋めようのない何かを強く感じさせる。喪失感、などと書いたら、そんな言葉は嫌いだ、と叱られそうだ。
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