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2026年8月 9日 (日)

何もする気がしないのでお勉強をする

 何もする気がしないので、録りためた放送大学の講義から、二十年以上前の特別講義を三本ほど眺めた。一本は『加速器科学』。シンクロトロンがどんなものか、何を解明しようとしているのか、素粒子についての最新の知識(三十年近く前の知識であるが)をもとに講義が進められる。クオークとか中間子とか、名前だけ知っていることについて、詳しい説明があった。続いて『量子化学の発展とコンピューター』という講義も眺める。分子の構造が量子力学によって計算で解析できるのだという。いまはこんな風になっているのだ。学生時代、NMRなどで分子の構造の解析に苦労したのが夢のようだ。この世にありえそうもない分子が宇宙からの光のスペクトル分析で発見され、そこから構造が解析されたりすることもあるらしい。コンピューターは本当に信じられないことが計算できたりするのだ。AIも、ただ恐れるばかりではなく、有用な面にもっと着目してほしいものだ。儲かるからと、情報を支配するという面ばかりに力を入れすぎているのではないか。

 

 三本目は、『諸橋大漢和辞典の六十年』という、あの大漢和辞典誕生の苦労話など、編纂に加わっていた諸橋轍次の弟子の教授の講義を聴く。戦前に辞書を作り始め、ようやく第一巻をほぼ完成させたところで出版社の大修館が空襲を受け、原稿から版下まですべて烏有に帰すという悲劇に見舞われる。その後なんとか立ち直って、ついに全十三巻を完成させたのは昭和五十年を過ぎてからだった。さらにそれを一から修訂していくという作業が続けられたが、白内障により諸橋轍次は片目を失明、もう片方も細かい字を弁別することが出来ない状態になってしまう。多くの人の協力でついにすべての改訂を終了したが、改訂版の出版のときには諸橋轍次はすでに帰らぬ人となっていた。

 

 私が尊敬している、たいへん世話になった上司は、この諸橋大漢和を持っていることを自慢していた。講義を聴きながらその人のことを思い出した。その人も既にこの世にいない。あの辞書はどうなっただろうか。

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