『白峰』
『雨月物語』の『白峰』をざっと再読して、以前はバラバラだったものがつながり、歴史の流れというものを少し理解した。これは建春門院の関連からの再読である。『白峰』は西行が四国にある崇徳天皇の陵(みささぎ)を訪ねてその怨霊の語りを聞く話である。崇徳天皇は、菅原道真、平将門とともに日本三大怨霊の一人であり、そして鳥羽天皇の中宮だった建春門院(藤原璋子)の産んだ息子でもある。崇峻天皇は父の鳥羽天皇から五歳の時に践祚される。鳥羽天皇は上皇となり院政を敷いて実権は上皇にあった。鳥羽上皇は美福門院(藤原得子)を寵愛し、崇徳天皇に譲位を迫り、美福門院の産んだ幼い息子を天皇にする。近衛天皇である。ところが近衛天皇は若くして夭折してしまう。美福門院は、自分が近衛天皇を無理強いしたことの恨みで崇徳上皇が呪詛したのだと深く逆恨みする。
本来なら崇徳天皇の息子が次の天皇になるはずが、美福門院などの暗躍によって、近衛の跡を継いだのは崇徳天皇の同母弟の後白河天皇だった。これらのことが保元の乱の原因につながっていく。保元の乱のあとにその責任を問われて崇徳上皇は讃岐に流されてそこで薨去するのである。だから讃岐にその陵があり、そこを訪ねた西行に恨みつらみを言い、さらに将来にわたっての呪いの言葉を連ねていく。これはそのまま平家物語の世界そのものの予言である。もちろん、これらは崇徳天皇の怨霊の見た世界観をもとにしている。そういう世界観による歴史絵巻が怨霊の呪詛の言葉によって再現されていくのである。
瀬戸内寂聴により建礼門院を知り、芭蕉によって西行を知り、平家物語によって平氏の興亡を知り、さらにその背景に流れている人間の感情を知り、いろいろと考えさせられた。
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