『三国志 外伝』
二三日前、寝床で眠れずに、つい手にとった宮城谷昌光の『三国志 外伝』を読み始めたらおもしろくて読み切ってしまった。これは題名どおり、本編『三国志』全十二巻の外伝である。この外伝には十二人の人物の概略が語られている。その中に正史である『三国志』を著した陳寿も取り上げられている。その陳寿の項のなかに「勇気とか不屈とかいう精神は、政治や軍事の表舞台に立つものだけが発揮するものではない」という陳寿の思いが語られている。本編のなかの脇役たちの、それぞれにもそれなりの生き様があることをこの外伝は記している。
様々な人の書いた『三国志』を読んできた。いま手元にあるものだけを見ても七八種類あるから、処分したものを含めれば十作以上は読んできただろう。その中で最もこちらに響いたのが宮城谷昌光の『三国志』全十二巻だった。『三国志』には、正史である陳寿の『三国志』をベースにしたものと、羅貫中作とされる『三国志演義』をベースにしたものとがあり、物語としては『三国志演義』をもとにしたものが圧倒的に多い。しかし宮城谷昌光は正史の方をベースにして、さらに後漢の時代から説き起こしてその歴史的背景を詳述していく。淡々と史実を積み重ねていきながら、その中でうごめく人間たちの様子が浮かび上がってくる。彼の文章には過剰な感情表現がほとんどない。だからこそ浮かび上がるものが鮮明になる。それは三島由紀夫が嘆賞した森鴎外の歴史小説に似たものがあると私は思っている。
宮城谷昌光の歴史小説が大好きで、最初に世に出た『夏姫春秋』以来、ほとんどの本を購入して読んできた(最近はほとんど読まなくなったが)。一時期は百冊以上が棚に並んでいたが、いまはかなり処分してしまい、三十冊ほどが残っているだけだ。若ければ最初から読み直したいところだが、そんな時間はもうない。しかし、『三国志』全十二巻だけは読み直したいと思っている。併せて井波律子の『三国志演義』全四巻も読みたいと思っている。
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