『悠々として急げ』
先日、たしかEテレで開高健とベトナム戦争についてのドキュメントを再放送していた。開高健の本は私に日本文学の扉を開いてくれた恩義があるとともに、ベトナム戦争について考えるという手がかりを与えてもくれた。書棚にも十冊あまりの本が並んでいる。
久しぶりに開高健を読もうと思ったが、小説を読むのは少し重く感じたので、対談集である『悠々として急げ』という本を棚から引き出して読んだ。特異な人ばかり十二人が対談相手に選ばれていて、彼が世界中を歩き回って仕入れたアンダーグランドなものまで含めた膨大な知識を駆使して相手と渡り合っている。十二人の最後は自分自身であり、「けん」と「たけし」の対談である。限界を超えた世界を嬉々として生きている人たちは、たしかに生きることを楽しんでいて、そうありたいと思いながらもがいている開高健の、彼らをうらやむ気持ちがなんとなく感じられた。
そのあとブラッド・ピット主演の『フューリー』という戦争映画を見た。第二次世界大戦末期、ドイツまで侵攻したアメリカ軍が最後のドイツ軍の猛反撃の中で苦戦する様子が描かれている。凄惨なシーンが連続した、戦争というものの現実を思い知らせてくれる映画で、たぶん開高健もベトナム戦争に従軍したときに、このような世界を眼前にしたのだろうと思った。この経験の前と後とでは、開高健はたぶんちがう人間になったのだと思う。
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